危ない家庭教師〜美男兄弟の誘惑〜
私はそれを聞いて、嫌だなあと思った。


章さんにしてみれば、家族に出掛ける事を告げただけなんだと思う。

それは解るんだけど、涼に知られたくなかったかなあ、と。

別に悪い事をしてるんじゃないのに、後ろめたさみたいなものを私は感じた。




来生家を出ると、私は章さんの横を俯き気味に歩いていた。


雨降りではないけれど、梅雨特有の湿気が多い夜で、肌に纏わり付くような、重たい空気が気持ち悪かった。


「何か元気ないけど、大丈夫?」


章さんが優しい声でそう言い、「大丈夫です」と私は答えた。


「そう? 涼に何かされたんじゃない?」


「え?」


思わず私は顔を上げ、章さんの顔を見た。


いきなりそういう事、言うかなあ。仮にも涼は弟なのに……


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