Addict -中毒-
「遠慮しておくわ。私テキーラが苦手なの」
彼のグラスを突き返す。
「じゃぁ奢るよ。シャンディガフだったよね?最初の一杯目は」
よく知ってるわね。
私の最初の一杯を。
「年下に奢られる趣味はないの。ルシアンを」
私は彼の言葉をさりげなく交わすと、ユウくんに笑顔を向けた。
彼はまたもおもしろそうに笑う。
「やっぱりおもしれぇな」
「言ったでしょう?『おもしろい』は口説き文句にならないって。お勉強がはかどってないようね。大方どこぞの女と遊んでて忘れたんでしょう?」
私の言葉に、彼はちょっと面食らったように肩をすくめ、それでもすぐに笑顔を浮かべた。
「それって妬きもち?」
「はぁ?そんなわけないでしょう?」
ぞんざいに切り替えしたけれど、本心を言い当てられて私の心臓がドキリと跳ねた。
「ねぇ、何で一ヶ月もこの店に来なかった?」
彼はエル・ディアブロを飲みながら、さらりと聞いてきた。
「俺、一ヶ月通ったのに全部空振りでさぁ。嫌われたのかと思った」
「嫌われたってのは当たってるわね。でもあなたに会いたくなかったからじゃない。旅行に出かけてたのよ。あなたこそ次の週は来なかったじゃない」
言ってはっとなった。
これじゃ彼を目当てにこのお店に来たって言ってるものじゃない。
だけど彼はそのことに突っ込んでこなかった。