Addict -中毒-


「中国にね、出張だったのヨ。こう見えても結構多忙なんだ」


「ああ、それで…」


空港で見かけたのはやっぱり彼だった。


そう言えば電話でも言っていた。“出張”と―――




それと同時にアヤコという女の存在が現実の女としてリアルにぶら下がる。


「こんなところで飲んでていいの?彼女が心配するわよ?」


「彼女?そんなんいねぇよ」


面倒くさそうに彼はぐいとエル・ディアブロを飲んだ。


「飲み方を考えなさい。口当たりはいいけれど後からクルわよ」


そう、それがエル・ディアブロ―――赤い悪魔と呼ばれるゆえんだ。


「詳しいね。さすがだな」


「バカにしないでよ」


ふんと鼻を鳴らして、私はいつのまにか出されたルシアンのグラスに口を付けた。


ジンとウォッカをカカオが優しく包みこんだ味が乾いた口いっぱいに広がる。


「バカにしたんじゃない。尊敬してるの」彼は心外そうに整った眉を寄せると、少しだけ眉間に皺を寄せた。


こうやって見ると、歳相応の…いや、それ以上の大人の男を感じる。


「バカにしてるのはそっちじゃね?俺を年下の何にも知らないガキだと思ってるだろ?」


「そうね。若そうに見えるけど、あなた一体いくつなの?」


「おたくは?」


彼はさっきの不機嫌をどこへやら、にこにこ笑顔を浮かべて両腕をテーブルに載せた。







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