Addict -中毒-
二杯目はホワイトレディを頼んだ。
「イケる口だね♪」
とネグローニのロックグラスを傾けながら、彼がやんわりと笑った。
「あなたもね。そっちこそ大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。俺結構イケる口」
ロックグラスを傾けて、氷をカランカランと鳴らすと、彼はそれを勢い良く口に含んだ。
男の色気を滲ませた喉が上下して、不覚にもその姿に―――見惚れた。
「大人ぶるのはやめなさい。お酒はそうやって飲むものじゃないわ」
胸の鼓動が昂ぶっていくのを感じて、私はわざと大人目線で言ってやった。
短い間で、彼が年下扱いされることをあまり良く思わないと分かったから。
案の定彼はちょっと眉間に皺を寄せると、軽く私を睨んだ。
「心外だな。ガキ扱いするなよ。うまい酒をどう飲もうが俺の勝手だろ?」
私はちょっと肩をすくめた。
「そうゆうところがガキだって言ってるのよ。挑発なんて受け流しなさい。それが大人のオトコよ」
カウンターの向こうで珍しくユウくんがくすくす笑ってる。
彼はおもしろくなさそうに、半目でグラスを見つめると、
「ユウくん。もう一杯エル・ディアブロ」とバーテンのユウくんに、目配せした。
そして私の方に視線を戻す。
その視線は、グラスの中に残った氷のように冷たく冷め切っていた。