朝が待てなくて
「ちょっとそれ、ほめてんの? けなしてんの?」
笑ってそう返したら、大淀は足をとめ、一瞬マジな目をしてわたしを見つめた。
「失恋宣言だから、これ」
「え?」
「ちゃんと、振られてやるよ」
大淀……。
それだけ言うと、またスタスタと歩きだす。
あわてて追いついたら、大淀はなんだか間延びしたように付け加えた。
「ま、おかげで兄弟の呪縛からは逃れられそうだよ」
「兄弟の呪縛?」
「うん。うちの兄貴達は誰よりも優秀で、誰からも尊敬されていて、ずっと俺の理想だったから」
そんなことを大淀は話してくれた。