朝が待てなくて

「兄貴達みたいになりたいと思ってたときもあったけど、俺、無理だし


届かない自分が二流なんだとあきらめてた」


そこで大淀は小さく笑う。




「それなのにあいつってば、兄貴達とはまるでかけ離れてるくせに、なんかちょっと、悪くないっていうか……」


ふむふむ。




「樹は太陽みたいな人だからね。明るくってあったかくって眩しいでしょ?」


なーんて言ったらバカにすると思ったのに、大淀は、あはは、と笑って


「勝てねーわけだ」と言った。





「とにかく、今まで自分が何にこだわって、何をあきらめてきたのか、なんだかバカみたいに思えてきて……」


「ふーん」


「夏休みの間中、そんなことを考えていた」


「えー、暗いよ」


驚いてそう言うと、大淀は涼やかな顔をして胸をはる。


「暗くていーんだよ。俺、太陽じゃねーし」




俺は俺だから、って。


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