朝が待てなくて

ちょうど樹の会社の前に着いて、わたしは足をとめた。


横を振り向いた大淀を真っ直ぐに見あげる。




「あのね、ありがとう……。いろいろ、いっぱい」


「うん。俺も」




大淀は優しい目をして笑ってくれた。




「がんばれよ」


「うん……!」




振り向かずにそのまま歩いていく大淀の背中を、いつまでもわたしは見送っていたんだ。


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