朝が待てなくて
「真琴?」
そのとき、思いがけない方向から声をかけられた。
道路の反対側に設置された自販機のかげから、樹がひょっこりと現われた。
片手に3本、缶コーヒーを持っていて、もう一方の手にあるオーレの缶を、ヒョイと目の前に差し出す。
「ん」
「あ、ありがと」
スイッと、樹の茶色がかった瞳が、わたしの顔をのぞき込んだ。
「な~に、ずいぶん熱心に見送ってんだな」
「え? 大淀だよ?」
「知ってる。しゃべってるとこ見えてたし……」
何か言いたげな瞳がそれて、樹は事務所へと歩き出した。