朝が待てなくて
「あいつんち、こっちじゃねーだろ?」
「うん」
ミャンマーと同じで、ホントはもっと手前を曲がるはず。
「大淀、本屋さんに行くんだって」
「本屋?」
「うん。この先に駅前のよりも大きな本屋さんがあるって」
以前そう言ってた。
「ねーしなぁ」
困ったような、笑っちゃいそうな目をして樹がボソッとつぶやく。
「え、あるよ? わたしは行ったことないけど」
本屋に向かう大淀と何度か偶然出くわして、ここまでの道のりを一緒に歩いたことがある。
「ない」
なぜかきっぱりと樹は言った。
「じゃあ、つぶれちゃったのかな…?」
キョトンとそう言うと、樹は軽くため息をついて
「犯罪級だな、そのニブさ」と言った。