朝が待てなくて
髪に唇が触れ
背中にまわした腕をゆるめると
樹はわたしのまぶたにそっと
小さなキスをした。
ヒャ……ッ。
思わず肩をすくめて、キュッと目を閉じたとき……
突然、目の前にある事務所の扉が開いて
「おらっ、樹―! コーヒー買いに行かせたら、どんだけ時間かかってんだーっ!」
って怒鳴り声とともに社長さんが飛び出してきた。
「うわっ」
驚いて叫んだのは社長さんのほうで
樹とわたしはバネじかけみたいに、バッと体を離した。
「な、何やってんだ、バカ野郎。大事な会議するっつったろーが」
社長さんはあわてて事務所の中へと戻って行く。