ラフ

揺れる想い

***** 泉's View *****

奈緒を見送って、家に帰った。正直なところ、無理やりにでも一緒にいてほしいと思ったし、引き止めたかった。が、それでは奈緒が困る。だから諦めた。

家に戻ると、仕事の準備をした。
奈緒のためにも、きっちり仕事をこなそうと、そう思っていた。

携帯が光る。
奈緒との時間を邪魔されたくなくて、マナーモードのままにしていたのを忘れていた。

「はい、もしもし。どうしたんすか?」

マネージャーからの電話だった。

「今から?場所は?え、マンションの下にいる!?すぐに出ます」

準備をしておいてよかったと心底思った。
今日、奈緒の家に行ってなかったら、きっとまだ寝ていただろう。
奈緒に感謝しながら、家を出た。


「実は明日の予定だったロケが、急遽、今日に振り替えになっちゃったから、今からそれに向かいます。で、その後の予定は前から言ってた通り」

マネージャーの話をふんふん、と泉と堺は聞いていた。

「で、今日はそれで終わりなんだけど」

「けど?」

「・・・2人に、東京での仕事のオファーが入った。どうする?」

顔を見合わせる2人。

「正直、東京にも、時々いってるでしょう?で、今回のその、オファーの内容なんだけどね、東京で、レギュラーで、お笑い番組の司会をしてほしいらしいの」

「まじで!?」

「ええ。2人にとって、これ以上ないチャンスだと思うのよね。受ける?今以上にハードなスケジュールになると思うけど」

2人とも、それぞれの彼女のことを思い出した。今以上にハードになるってことは、それだけ会えなくなるということだ。

「でも、ゆくゆくは、東京へ進出するわけだし。そう思ったら、今回の話は絶対、受けたほうがいいと思うのよね」

「東京」

「仕事だって、きっと増えるわ。それに、もっともっと有名になれる」

2人は黙ったままだった。

「今回の仕事は、場所が場所だから、1日だけ、猶予をもらったわ。私としては、OKで返したいんだけど、あなたたちの気が乗らないのに、私の独断で決めるわけにはいかないしね。今日1日かけて、ゆっくりと考えてみて頂戴」
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