ラフ

事件発生

***** 奈緒's View *****

何度も何度もキスをした。そして、初めて。私は泉とひとつになった。
私の名前を何度も呼びながら、大切に、愛おしそうに、愛してくれた。
幸せだった。

ほんとにこの数日で、いろんなことがあった。
でも、きっと。これからは何があっても大丈夫。
そんな気がした。




「お母さん、ねぇ、お母さん」

「なあに?奈緒」

「美穂ちゃんがね、お父さんがおらんくて、お母さんがかわいそうやっていうの」

「え?」

「お母さん、奈緒のお父さんはどこにおるん?」

「奈緒・・・」

「お母さん一人じゃ、寂しいやろ?なんでお父さんはおらんの?」

「・・・奈緒?お母さんは一人やない。奈緒がおるもの。やから、寂しくなんかないんよ?」

「でも」

「お父さんはね、奈緒のことも、お母さんのことも、大好きやったんよ。でも、一緒にはいられない理由があった。やから、辛いけど、今は別々に暮らしてるんよ」

「奈緒は、お父さんに会えないん?」

「・・・奈緒。お父さんは・・・・・・・やから。我慢しなさい・・・・・・」




ふっと目が覚めた。
遠い遠い、昔の記憶。忘れかけてた、昔の、記憶。

「奈緒?」

名前を呼ばれて横を見る。

「ごめん、起こしてもた?」

隣で寝ている、泉の頭を撫でた。

「いや、それよりどうかした?」

「ううん、ちょっと、昔の頃の夢を見ただけ」
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