ラフ
「すごいわね。高松効果、恐るべしってやつ?」

笑いながら、九条が言った。

「ほんとに、すごい」

高松が電話で、言ってた、俺なりのやり方っていうのは、かなりの効果があった。

「お礼、しないと」

携帯のメールを打った。
ありがとうございます。と。言いたいことはたくさんあるけど、それをメールにするには、少し多すぎる。

なので。

【ありがとうございました。週末のデートで、何かお礼、させてください】

短く、そうメールを送った。


奈緒を襲おうと、実行に移した犯人は、やはり、高松の熱狂的なファンだった。その子は、高松の呼びかけを聞いて、泣きながら、警察へと出頭してきたそうだ。
なぜ、あの子があんなに高松に大事にされるのかわからない、ふさわしくない、ということらしい。

そして、愛は泉が奈緒を選んだ腹いせだった。

とんだとばっちりだわ。とぷりぷりと怒った。



夕方になり、九条は帰る支度をした。テレビでの効果を考えると、もう、奈緒に護衛は必要ないだろうとの判断で、署に戻るよう、今里から連絡が入ったとのことだった。

「それじゃ、この様子だと、もう、護衛もいらないでしょうし、自分のマンションに帰っても大丈夫だと思うわ。今日はこのまま、ここにとまるんでしょう?」

九条に言われて、テレながら頷いた。

「羨ましいわね。ま、あなたが誰と付き合ってるのかは、ちゃんと、秘密にしておいてあげる。よかったら、今後も、仲良くしてね?」

そう言って手を差し出してきた。私も手を握り返す。

「九条さん、ありがとう」

「有紀で結構よ。また、いつでも連絡してね?奈緒ちゃん」

「うん、本当にありがとう」

九条を見送った。
広い部屋に、また、1人になった。

なんだか、少し、寂しくなった。
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