ラフ

見えない糸

ふむ、と高松のメールを確認し、了解、と返信した。
時計を確認すると、時間はまだ17時。指定の時間までは、まだ3時間ある。

持ち運べるように、箱を入れる袋を探して、片づけをした。干した洗濯物を取り込んで、といろいろしていると、気づけば約束の時間まで後少しになっていた。

「そろそろ、出ますか」

家を後にした。
外はだいぶ暗くなっているが、周りは建物の光で明るい。

「都会の夜って、ほんまに明るいなぁ」

ぽそぽそ、独り言をつぶやきながら、劇場へと向かった。
裏口からの守衛室の前を通って、中に入った。守衛には、高松から話は通してあったようで、どうぞ、と中に通された。うろ覚えの記憶を頼りに、控え室へと向かった。

「あれ?奈緒ちゃん?」

呼ばれて振り返ると、見覚えのあるスタッフがいた。

「あ、お久しぶりです」

「おー、覚えてくれてた?うれしいなぁ。今日もピースの2人に会いに?」

「あー、ちょっと高松さんに用事があって」

「そっか。ピースの控え室は、そこの突き当りを右に曲がったところやで」

親切に場所を教えてくれた。

「ありがとうございます」

深々とお辞儀をして、控え室へと向かった。
控え室に到着し、扉をノックした。なかから、「はい」と返事が聞こえた。

「失礼しまーす」

中に入ると、高瀬と岸田がいた。

「あれ?奈緒ちゃん」

「どうも、お久しぶりです」

「久しぶり。どうした?」

「いえ、高松さんに、20時に終わるから、控え室のほうに来てほしいって言われて」

「ふーん・・・まぁ、入りなよ」

「あ、はい」

中に入った。
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