ラフ
***** 泉's View *****

奈緒は今日、高松さんと食事をする。
なぁに、問題なんかない。ちょこっと会って、ちょこっと食事をするだけ。

今朝から、何回考えたかわからない。大丈夫ともしもが、何度も頭をよぎった。

「泉君?どうしたー?」

呼ばれてはっとする。撮影中だというのに、また奈緒のことで思考が停止した。今日何度目のダメ出しかわからない。


「おい、なんかあったんか?また仲間ハズレとかは勘弁しろよ?」

堺に聞かれて、いや、と短く答えた。さすがに、理由が恥ずかしすぎる。

「集中せんとな」

気合いを入れた。


今日は何度もそんなことが続いた。情けない。


控え室に戻ると、マネージャーにこっぴどく叱られた。まぁ当然だ。

俺は今日の予定を大きく狂わせてしまったから。


「…明日の昼からの予定は、月曜日に変更になったから。明日の朝はしっかりしてよ!?わかった!?」

「すいません、了解です!」


明日は午後からは仕事がない!奈緒と久しぶりにゆっくりできる!

急いでメールしようと思ったが、時計はすでに深夜の1時を回っていた。今からでは逆に迷惑になるか。

そう思って、明日朝一で、メールを送ることにした。
携帯を手に取ると、メールが1通とどいていた。奈緒からだ。



【あいてる時に、いろいろ報告したいことがあります。また、会えるときを教えてください】



なんだか、いろいろ想像の膨らむ文面だ。


あんまり、今夜は、眠れそうにない。

遅刻しそうな気がしたので、死ぬほど嫌がる、堺の家に泊めてもらった。
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