ラフ

すれ違い

手が震えて、涙が溢れて、目の前がかすんで見えた。
立っているのも辛くて、近くにあったソファに座った。

・・・昨日、涙はもう全部出きったと思ってたのに。

次から次へと溢れてくる涙が止まらない。
どうしようもないくらいに、涙が溢れてくる。

「おっじょぉっさん♪どうし・・・」

陽気に声誰かが声をかけてきた。顔を上げると、高松の姿がにじんで見えた。

「奈緒ちゃん、どうした?」

真剣な顔で聞いてくる。すっと奈緒の正面にひざをついて座って、涙を拭ってくれた。

「・・・な、ここで泣いてたら目立つで?ちょっと場所、移ろうか」

高松の言葉に、力なく頷く。それが精一杯だった。映画館から少し歩いたところにちょっとした公園があった。そこのベンチに座るよう、高松に言われて、座った。少しして、高松は飲み物を持ってきてくれた。

「ほら、ちょっとは落ち着くで」

渡されたアイスティを一口飲む。
肩がずっと震えていた。

「何があった?」

心配そうに高松に聞かれ、また涙が溢れてきた。

「うわぁぁぁぁー・・・・」

声を出して泣いた。朝の公園とはいえ、ジョギングをしている人もいた。きっと、恥ずかしいに違いない。それでも、涙は止まらなかった。
高松は、優しく抱きしめてくれた。


どれくらい泣いたか分からなかった。
ずっとしゃくりあげて、声が出なかった。
喋るのも辛い。
そんな気持ちだった。


「少しは落ち着いたか?」

聞かれて小さく頷いた。
そうか、と高松は呟くと、それ以上は何も聞いてこなかった。
きっと理由を聞かれたら、また泣いていただろう。
でも、高松は、聞かずにそっと、落ち着くのを待ってくれていた。
< 47 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop