ラフ
明日香と離れてしまう!そう思って腕を伸ばしたけど、間に合わなかった。
とにかく、高松に引っ張られて気づけばまた、控え室の前に戻ってきていた。

「ね、奈緒ちゃん、今晩暇?」
「暇じゃない」

即答で答えた。

「それより、明日香とはぐれた!」

あわてていると、高松がきょとんとした顔で聞き返してくる。

「明日香って、さっき一緒にいた子?」

ぶんぶん、と首を縦に振る。
高松は笑いながら、私の後ろを指差した。
振り返ると、高瀬にお姫様抱っこをされている、明日香の姿があった。

「明日香!」

駆け寄ると、高瀬はゆっくりと、明日香を下ろした。
明日香は耳まで真っ赤になっていた。

「明日香?」

不思議そうに顔を見ると、パニックになっているのか、目の焦点が、若干合っていなかった。

「なな、何で私まで拉致られたの!?しかも、お姫様抱っこで!」

あはは、と苦笑いを浮かべる。
笑い事じゃない!と明日香がぷんぷん怒ってきた。
少し落ち着いてきたときに、不思議そうに高瀬の方を見ながらぼそっと言ってきた。

「あの人にいつの間にかだきかかえられてたのよね。絶対に、やばいわ」

高瀬が、明日香と目があうと、ひらひらと手を振ってきていた。

「・・・明日香もなんかやばそーねー」

明日香の顔が引きつっていた。

「ね、ここって楽屋とかがある舞台裏ってやつでしょ?要君たちもいるんじゃない?」

明日香に言われて、うーん、とうなった。

「さっきいた。けど、ほかのスタッフさんとかもたくさんいるし、あんましちょろちょろしたら邪魔になると思うんよね。やっぱり外に出とかない?」

明日香が難しい顔をする。

「いいけど・・・私は大丈夫やけど、奈緒は危ないんじゃない?」

「何で?」

「さっき、高松さんのファンもしくは追っかけっぽい子に顔をばっちり見られてたから。

血の気がさっと引いていった。
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