ラフ
ふーっと威嚇する猫のように高松と対峙する。
バチバチっと火花が散った。(・・・たぶん、奈緒だけがそう思っているのだが。)



「・・・あの2人、知り合いやったんかなぁ?」

明日香がつぶやくと、いつの間にか隣に立っていた高瀬が答える。

「たぶん、土曜日の夕方。知り合ったんだと思うよ?」

気配なく近寄られ、さらに返事が返ってきたので、びくっと身をそらす。

「ど、土曜日?」

「うん、多分。高松が奈緒ちゃんをナンパしてるところ、見かけたもんで。ま、本人はふられたって言うてたんやけど、今日一気に進展があったみたいやね」

つつつ、と、明日香が高瀬のそばによる。

「その辺の詳しい話、ぜひともお聞きしたいわ。高瀬さん、知ってるんですか?」

ちろっと高瀬の方を見やると、高瀬はにやっと笑って返してきた。お互いにふふふっと笑って、それ以上は何も言わなかった。



「・・・あれ?明日香と高瀬さん、いつの間にあんなに仲良くなったんやろ?」

「・・・さぁ。多分、ついさっきとかちゃう?」

「そうよねー。他には・・・思い浮かばんし」


お互いに、それぞれをうーん、と見ていると、大部屋にいた人たちが、ぞろぞろと中から出てきた。

「あ、高松さん!その子、もしかして奈緒ちゃん!?」

言われて、そうそう、と、高松は頷いた。

「なんでこんなに、名前が一人歩きしてるわけ!?」

ぞろぞろっとみんながまるで珍獣でも見るかのように、周りに集まった。


ひー!助けてー!!


人の波に飲み込まれそうになっていると、ぱんぱん、と手を叩く音が聞こえた。
その一瞬、みんなの動きが止まった。

「はいはい。奈緒ちゃんがつぶれるやろー。今日の飲み会に参加するから、あせらなーい、あせらなーい」

声の主はむろん、高松。
言ってない!!といいたかったのだが、周りの人たちが、おぉ!と行こう行こうと、引っ張って行く。

「えぇ!?わ、私は別に・・・参加者でもないですし」

「だいじょーぶだいじょーぶ。そんなん気にせんでええって」

「ほらほら、行こいこ!」
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