紫陽花の中の猫
「確か…美月(ミヅキ)ちゃんだったよね?」
俺に自分の名前を呼ばれ覚えているとは思っていなかったんだろう…少しびっくりした顔をして『はい?』と俺を見た。
「行く所が決まるまで此処に居てくれても大丈夫だよ?」
俺は彼女にそう投げ掛けると目を丸くして慌てたように言葉を発した。
「そ、そんなご迷惑掛けれません!!」
手を左右にブンブン振りながら少し挙動不審になりながら後退りした。
「そんな思いっ切り抵抗しなくても…(笑)」
俺がクスクス笑うと彼女は顔を赤くして『あ、いえ、その…』と苦笑いした。
「…俺の事は気にしなくてもいいよ。どうせ日中は殆どいないし寝に帰るだけの生活だから…好きに使ってよ。」
俺がそう言って彼女の頭をポンポンと触ると彼女は頷き小さい声で『…はい、有難うございます。』と呟いた。