紫陽花の中の猫
エレベーターは最上階に着くとゆっくり扉を開いた。
ただ、ボー然とする彼女の背中を押し部屋へと案内する。
リビングに招き入れると俺はソファーに座るように彼女を促した。
彼女は落ち着かない仕種をしながらソファーに座ると俺をチラッと見た。
俺は彼女が座ったのを確認すると『少し待ってて』と彼女にニコッと軽く笑いかけキッチンに飲み物をとりに向かった。
キッチンでポットに水を入れスイッチを押しお湯が沸くまで片方のマグカップにはココアをもう片方にはコーヒーを入れた。
キッチンから彼女の姿をチラ見しながらどう話しをするか様子を伺っていた。
そうしている間にポットの水は沸きマグカップにお湯を注ぐ。
スプーンで軽く混ぜた後、マグカップを二つ持ってリビングに歩きだした。
ソファーに座る彼女は相変わらず落ち着かない様子だった。
「…はい、ココアで大丈夫だった?」
そう投げ掛けながらマグカップを彼女に手渡しした。
『はい,,有難うございます…』とマグカップを両手で受け取るとマグカップに入ったココアを眺め『温かい…』と呟いた。