内緒の保健室
そしたら…
この蓮斗の寝顔も…。
笑顔も、意地悪な顔も、優しい顔も、クールな顔も、全部…、全部絢のものになっちゃうの?

…ううん。
もっとあるかもしれない。
絢に、あたしの知らない蓮斗を見せるかもしれない。

そんなのっ…。
そんなのっ…。
『そんなの…嫌だよ』
蓮斗と絢が付き合う…。
美男美女カップルかもしれない。けど…
『っく…うぅ…ズツ…』
涙があふれる。
止めようとして上をむいても、止まってくれない。
あたしは寝てる蓮斗に背をむけた。

思い浮かぶのは、蓮斗の事ばかり。
『絢と蓮斗が付き合うなんて…嫌っ…だよ…』
耐えきれない。
今までこんな辛い恋なんてあったっけ?
もう…だめだあたし…。
そう思ってもう一度鼻をすすった時。
「蓮斗が誰と付き合うって?」

聞きなれた声。
落ち着くいい香りに包まれた。

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