龍とわたしと裏庭で③【黒魔術編】
航太は圭吾さんの方を向いた。


「あんたいくつ?」


「二十二。志鶴の相手としては常識の範囲内だと思ってるけど」


「普通の女子高生ならな。こいつ男とつき合ったこともないんだぜ」


「知ってるよ。だからまだ手はつけてない」


「はぁ?」

今度は悟くんが素っ頓狂な声をあげた。

「まだ手ぇつけてないの? 何やってんの、一緒に寝てるのに」


「一緒に寝てるぅ?」

と、航太。


「ああもう! 人の恋愛なんだからほっといてよ!」

わたしは真っ赤になりながら言った。

「だいたい、航太は学校どうしたのよ」


「夏実のとこは教員研修。俺はサボりだっ!」


威張ってどうすんのよ


「一緒に寝てるの? 紫の上みたい」

なっちゃんがにこやかに言う。


なっちゃん、火に油注いでどうすんの。

紫の上は一緒に寝てるうちに光源氏の奥さんにされちゃうんだよ。


スポーツバカの航太でもさすがに源氏物語は知っているらしく、今にも殴りかかりそうな目で圭吾さんを睨みつけた。


「航太、だいじょうぶだってば」

わたしはなだめるように言った。

「二十歳になったら圭吾さんと結婚するの。親父の許可ももらってる」


あ……目ぇむいた

あんまり効果なかったみたい
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