静かな海の兄き
宏史は

白いバイクにまたがり
後ろのタンデムシートを

“ポンポン”

と 叩き

「早く乗れよ。」

そう言いながら翔を見た。

「え…でも…。」

ヘルメットを抱えたまま

躊躇する翔。

その様子を見た宏史は

バイクを降り

翔の元へ歩みよった。

「あ…あの…」

何か言われると思った翔は

体を硬直させた。



宏史は

翔の手からヘルメットを取ると

そのまま翔にかぶせた。

???

またしても

訳の分からない宏史の行動に

翔の思考は

もう…ついていけない…

「アゴひもは
ちゃんとしとかねぇと
危ないからな。」

ヘルメット越しのくぐもった宏史の声は

やはり

楽しそうだ…

「はい。
では出発~。」

そう言って

翔をタンデムシートに座らせると

自分もバイクにまたがり

エンジンをかけると

サイドステップを軽く足であげて

アクセルをふかし

「しっかりつかまってろよ!」

翔に声をかけ

バイクを発進させた。
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