愛情狂現-2人の日常-
「おいしいよ、春」
「! よかったー!」
珍しいと思った。
秋が何かを食べておいしいと喜ぶことはあまりないから。
確かに、私が何かを作ってあげたときは喜ぶけれど、それは飽くまでも“私が作ったもの”だからだ。
買ってきたものを食べておいしいと言っているところを見たことはほとんどない。
それほどまでに、秋は自分に関心を持たないんだ。
だから私が食べるなと言えば、彼はきっと何も口にしない。
私がキライだと言えば、彼はきっと自分を嫌いになる。
そして仮に私が死んでくれと言えば、
「ありがとう、春」
――彼は喜んでその命を投げ捨てるだろう。