心はいつも、貴方とともに
「何が言いたいんだ、アミリア。」



初めて、こんな顔を見た。



怖くて俯きそうだったが、それでもアミリアは顔を上げた。



「私が、生贄にでもなれば…。」


「そんなことでこの飢饉が止むとでも、お前は思うのか?」



ぐっと言葉に詰まる。



そんなこと、あるわけない。



自分は、神の御子でもなんでもないのだから。



「人間が一人、死んだところで何も解決はしないよ。
この原因は虫、寄生虫なんだから。
国民の馬鹿みたいな信仰心なんか、役に立たない。」



感情のこもらない声で、ランバートはすらすらと詩でも朗読するかのように淀みなく言いいながら、水をコップに注ぐ。



アミリアはその間、普段とは違う兄を目で追う。



ランバートは煽るようにして水を飲み干してから、アミリアに向き直った。



「それでも、お前は俺にお前を殺せと進言するのか?」



蔑むような、悲しいような、寂しいような、何とも言えない目で、顔で、アミリアを見つめる。



もう、何も言えなかった。



「申し訳ありませんでした…。」


「来い。」



ランバートはゆっくりと腕を広げる。



「なんとかして見せるから。
お前が馬鹿なことを考える必要なんか、ないんだ。」



ぎゅっと兄に抱かれながら、アミリアは何度も頷いた。



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