幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「誰?」

「サンディよ。伯爵様のところの。今、下ろしてあげるから静かにして」

「蛇が……蛇がいっぱいいるんだ!」


――軟弱だな。蛇が入りこめねぇように、ちゃんと網がかかってるじゃねぇか


ジャルグはあたしの肩から滑り降り、猫のように伸びをしながら体を震わせた。

赤い光がジャルグを包み込む。

すると、トカゲくらいの大きさだったサラマンダーが、みるみる育ちすぎた雄猫くらいに大きくなった。


――まずは掃除と洒落込むか


ジャルグが炎の息を吐いた。

赤い炎は生き物のように地面を這い、ヒュドラ達を焼き尽くして行った。

あたしは黒こげになった蛇の死骸を棒でどけながら檻に近付いた。


いったい誰がこんな事を?


檻は滑車で吊り上げられているようだった。

だけど、こんな手の込んだ事をするためには、屈強な大人の男が少なくとも二人は必要だろう。


――退けてな、嬢ちゃん

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