幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「姫は、女王になりたかったわけではないのですね」


「そうだったんでしょうね。あたしは子供の頃、この話をしてくれた人に『どうして姫は女王様にならなかったの?』って聞き続けて呆れられましたよ」


王妃様は笑った。

寂しい境遇と儚い雰囲気にも関わらず、王妃様はよく笑う方だった。


「それで? 続きはないのですか?」


「『女王様になるより、大好きな人と一緒にいる方が幸せなんだよ』って言われました。納得しませんでしたけど」


あれは冬の夜。

うちの家族は、季節毎の祝祭日を伯爵家で過ごすのが恒例だ。

たぶん冬至祭の時だろう。

暖炉に火が燃えていて、あたしは毛皮の敷物の上に腹ばいになってホークにお話をねだった――ああ、ホームシックになりそう


「そのお話をしてくれたのも、アルス伯?」

王妃様は悪戯っぽく尋ねた。


「ええ、そうです」

あたしは感傷的な気分を振り払った。

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