幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
『忠実なる アレクサンドラ

そなたに全てを話す時間がないかもしれないので、院長様にこの手紙を託します。


ここ数年、わたくしの故国とこの国の関係は悪化するばかりです。

もうすぐ戦が起きるでしょう。

わたくしは人質としてこの国に嫁して来ました。

戦になれば敵国の姫として死を賜る事になります。

王家の娘である以上、避けられない事ですし、そのように覚悟せよと育てられました。

けれど故国の母にとっては、とても耐え難く、わたくしのために一計を案じました。

それが、ジェニスタです。

同じ赤毛で、よく似た背格好。

四年間も幽閉されている王妃が掏り替わったところで、誰も気づかないはずでした。

けれど、ユニコーンを殺せないと泣いているそなたを見た時、わたくしもまた、ジェニスタを身代わりにする事は出来ないと悟りました。


そなた達と過ごした時間は、本当に楽しかった。

できればもう少し、皆と一緒にいたかった。


ウイローミアの失敗作は苦かったわね。

<まずい>とはこういう事を言うんだと分かりました』

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