海までの距離


「それにしても…飲み会したり家まで送って貰ったり、バンドマンとファンの関係にしては親密すぎません?」


咲がにやりと、鋭い指摘を突き付けてきた。


「そんな!ただ、友達がこの人と親しいから、私も親しくして貰ってるだけで…」

「そう?本当にそれだけ?」


食い下がらない咲に、顔がほてる私。
9月の末だと言うのに、残暑厳しく汗ばむ日々。
教室はクーラーがフル稼動。
新潟が雪国だなんて、昔話もしくは伝説だ。


「…それだけ」










面談をして欲しいと、担任の松岡に頼んだ。
松岡は二つ返事で快諾してくれて、放課後に職員室に来なさいと言ってくれた。
滅多なことでは行かない職員室。気後れする。
事務作業をしていた松岡の背後に声をかけると、松岡は職員室の後ろにある長机へと案内してくれた。
松岡の手には、何かの書類が入ったクリアファイルが。
こんな落ちこぼれのことでも、きちんと考えてくれているんだ…。
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