海までの距離

「松岡が推薦受けられるって!」


お母さんが座っているソファーの上に、鞄を放り投げた。
鞄がどさっと音を立てた後になって「しまった!」と思ったが、そのがさつな行為にお咎めなし。
お母さんも、驚いているみたいだ。
観ていたテレビに背を向けて、ぽかんとした表情で私を見上げている。
高視聴率だったドラマの再放送だ。こういうの、ほんとお母さん好きなんだから。


「あんたみたいなお馬鹿さんを、M高代表としてK大に突き出すなんて…」

「そんなに馬鹿じゃなかったってことだよ」


と、自分で言ってから、頭の中を過去に取った誇り高き赤点の数々が駆け回る。
ほんと、あの成績でもなんとかなるんだ…。


「K大って言えば、結構評判いい大学よね。でも、東京かあ…やっぱり東京の私大を受けるっていうのは変わらないのね」


お母さんも、K大を受けること自体には納得してくれているようだ。
多分、お母さんが引っ掛かっているのは、私が東京で一人暮らしをすることの資金と学費のこと。
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