海までの距離
お母さんも「そうねえ…」と、まんざらではない様子。


「行ってもいいなら、私、行きたいな…」


お父さんの後押しするように、お母さんにねだる。
K大がどんな学校なのか、見てみたい。
K大の生徒は、どんな人達なんだろう。
東京の私立だもん、皆お洒落に違いない。
あわよくばライさんが…。


「うん、そうね。行ってもいいわよ」

「やったあ!」


食事中だということも忘れ、私は万歳。
後で海影さんに連絡しなくちゃ!
海影さん、暇だったら相手してくれないかな。
そんな邪道な考えが浮かぶ。


「但し、日帰りな。そして新幹線は高いから高速バスで行きなさい」


お父さんの指示に異論はなかった。
日帰りでも十分。そもそも、外泊禁止の我が家で「折角だから1泊してこい」なんて話が出るなんて最初から期待していない。


「だけど、一人で東京なんて大丈夫なの?」


お母さんが味噌汁を飲みながら、不安がる。
東京には海影さんがいるから、いざとなったら…なんて甘い考えがあった。
だけど、東京にバンドマンの知り合いがいるだなどと言えば話がややこしくなり、折角の上京を剥奪されかねないので、黙殺することにする。
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