飛べない黒猫
「あのね、香水。」


「へぇ…どんな香り?」


真央は自分の手首の内側にシュッと吹きかけ、もう片方の手首の内側でクロスするように擦りつけた。
クンと香りを嗅いだ途端、ぱあっと明るい表情になる。


「庭の匂いだ!」


「へっ?庭?」


「ほら…」


真央は手を蓮の顔に近づける。


「あっ…いい匂いだ。
これ花の香りでしょ?」


「うん、ハーブ系かな…
癒されるいい匂い。」


真央の足元にいたクロオも、鼻をヒクつかせニャアと鳴いて真央の膝に飛び乗った。


「いい匂い?」


クロオはクンクンと鼻を近づけ、ペロリと舐めた。


「あはは、クロオも気に入ったみたいだよ。
クロオも女の子だからねぇ…」


真央は笑いながら、匂いを移すように手首でクロオの背中を撫でた。


心なしか、不安げだった真央の表情は和らいでいるようだった。

今回の洋子のフォローは、ナイスジョブと言っていいようだ。


「よし!女子力もUPしたことだし…行こうか。」


「うんっ。」


もう、真央の瞳に不安の陰りは無かった。
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