飛べない黒猫
お化けの子の一人が、飴やチョコを入れているポリ袋を手に名乗り出た。


「これ…さっきゲームでもらったの…」


「ありがとう。」


蓮は中の御菓子を取り出してその子に渡し、ポリ袋の口を真央の口にあてた。


「過換気症候群っていう過呼吸が原因の発作だから…酸素を取りすぎてしまうんだ。
こうやって、自分の呼気を再び呼気すると楽になるから。」


蓮は真央に話しかける。


「すぐ楽になるよ、風のあたる外に出ようか…
袋、自分で持てる?」


真央は目を閉じたまま、コクリとうなずき袋に手をあてた。

蓮は真央を抱き上げて、人だかりを抜け外に出る。


蓮は中庭の人の少ない階段脇に腰をおろした。

美香と直哉が神妙な顔をして声をかける。


「真央ちゃん…大丈夫?」


美香が恐る恐る真央を覗き込んだ。


「お前が、あちこち連れ回すから疲れさせたんだぜ、きっと。」


「…ごめん。」


美香は直哉に責められ、しゅん…と、なった。


「いや、美香ちゃんのせいなんかじゃないから。
こっちこそ…びっくりさせちゃってごめんね。
美香ちゃんには感謝しているよ。
真央はすごく楽しそうだった。
…な?真央、美香ちゃんに誘って貰って楽しかったもんな?」


真央は目を開け、涙目のまま大きくうなずく。


「…ね?、本当に美香ちゃんと発作は無関係だから。
気にすること無いからね。」
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