飛べない黒猫
「美香発見っ!
こんなトコにいたのぉ〜」


数人の団体が声をかけてきた。


「お化け屋敷やってまーす!
みなさんで、お越しくださぁい。」


お化けの仮装集団だった。

ゾンビメイクをして、ボロボロの衣装を着た子や、フランケンのゴムマスクをかぶった子、白い着物を着た幼な顔のお岩さんもいた。

明るい所で見ると怖さゼロの可愛いお化け達だが、なかなか手が込んでいて見事な出来栄えだった。


「あはは、わかった!わかった!
じゃあ、先にそっちに行くから。」


しつこく言い寄られていた美香が、蓮を見た。


「蓮さん、先にお化け屋敷行ってもいい?」


「あぁ、構わないよ…」


言い終わらないうちに、悲鳴がした。



悲鳴をあげたのは、お化けの仮装をした子。
両手を口に当て、驚いて青ざめていた。

その子の白いワンピースの胸にはナイフが突き刺さり、そのまわりは真っ赤な血で染まっている。


「この子が…アタシを見て、すごく驚いて…」


その子が見下ろす視線の先には、うずくまり発作を起こして苦しんでいる真央がいた。


…なんてことだ!
よりによって、こんなモン見ちまうなんて。


蓮は真央に駆け寄り肩を強く抱く。
「大丈夫だよ、すぐに良くなるから…」優しくささやいた。
そして、まわりに集まってきた人達に声をかける。


「心配いらないです、この子少し身体が弱くて。
誰か…ビニール袋を持っていないですか?」
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