飛べない黒猫
クリスマスソングが流れ買い物客でごったがえす中を、蓮は両手に荷物を抱えて母親の後を付いて歩く。

12月24日、今日はクリスマスイブ。
聖夜のイベントは、いつも一緒にいる家族や友人と過ごすにしても特別なもので、ましてや恋人と一緒となると当然誰もが胸躍らせて、その夜を迎える。


ここにも、胸躍らせ浮き足立ってる人が約1名。
シャンパンとクリスマスケーキを買い求め、彼氏に送るプレゼントの品定めに余念がない。


「ん…ちょっと手触りがなぁ。
ゴワつくのよね。
やっぱり、カシミア100%じゃなきゃ…
あっ!これ…
これ、よくない?
ねえ、蓮、この柄ステキよね!」


「……この上なくステキだと思いマス」


あっちだ、こっちだと連れ回されて、いい加減嫌気がさしてきた蓮は、もう、何でも良いからさっさと決めてくれといった態度。

洋子はお構いなしでスルー。


「そうでしょ、これよね。
これにしましょう!
見て、色違いもあるのよ。
…でも、彼にはやっぱり、コレね。」


グレーに黒色の落ち着いた柄のマフラーを手にしていた。


「このブルーの色違い…
これは、蓮へのプレゼントにしましょう!
キレイな色ね…うん、似合う。
よし、決まり。」


満足げにニッコリと蓮に微笑む。

やっと終わったか!
蓮もニッコリ微笑む。


「さ、次は真央ちゃんのプレゼントね。
女の子の物を見に行くのってワクワクするわ。
やっぱり、かわいいアクセサリーよね!」


勘弁してくれ…


「うふふ、大丈夫。
実はね、もう決めてあるの。
知り合いに頼んであるのよ、真央ちゃんが喜んでくれそうな手作りアクセ。
取りに行くだけだから、すぐよ。
さっ、時間も無くなってきたわ、行くわよ!」


やれやれ…嬉しそうだ。

更に増えた荷物をかかえて、蓮は洋子と並んで混み合っているショッピング街を急ぎ足で歩いた。

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