飛べない黒猫
青田はソファーに深く腰を沈め、向き合う男の顔を見た。
男は前屈みに座り、眉をしかめている。
「義兄さん、僕は反対です。
経営者だって言っても、小さな輸入家具の店だ。
…未婚の母だって言うじゃないですか。
しかも外国人との。
何を考えているんだか…
騙されてるんですよ、財産目当てなんじゃないですか?」
煙草に火をつけ、せっかちにふかす。
青田の妹の夫である岡田は、頭は切れるが気の小さい神経質な男だ。
「騙すなんて…そんなこと無いですよ。
目当てにするほどの資産家じゃありませんし。
お互いの状況をよく話し合って決めた事です、余計な心配は必要ありません。」
キッパリと言った青田に、納得いかない岡田は、なおも責める口調で続ける。
「再婚する気があったのなら、そう言って頂ければ…
私の方にも、義兄さんへの良い縁談話があるんですよ。」
「悪かったね、君にも前もって相談するべきでした。
だが、もう、私の意思は変わりません。」
「………。」
強い口調で押し切られ、言葉を返せずに黙った。
「とにかく、もう、決まった事です。
私の第二の人生を、どうか祝って下さい。」
「………。」
岡田には思惑があった。
青田の後継者に自分がなる事だ。
青田の娘は、使い物にならない。
では、誰が後を継ぐ?
そう、自分しかいないではないか。
現に、会社では役員として青田の片腕となってる。
そして、自分には大学生の優秀な息子もいる。
卒業したら、うちの会社に就職し、よくよくは自分の後継ぎとなる。
それが、だ。
青田が再婚すると、息子が出来てしまうではないか。
シナリオが崩れる。
岡田は煙草を灰皿に押し当て、乱暴に揉み消した。
男は前屈みに座り、眉をしかめている。
「義兄さん、僕は反対です。
経営者だって言っても、小さな輸入家具の店だ。
…未婚の母だって言うじゃないですか。
しかも外国人との。
何を考えているんだか…
騙されてるんですよ、財産目当てなんじゃないですか?」
煙草に火をつけ、せっかちにふかす。
青田の妹の夫である岡田は、頭は切れるが気の小さい神経質な男だ。
「騙すなんて…そんなこと無いですよ。
目当てにするほどの資産家じゃありませんし。
お互いの状況をよく話し合って決めた事です、余計な心配は必要ありません。」
キッパリと言った青田に、納得いかない岡田は、なおも責める口調で続ける。
「再婚する気があったのなら、そう言って頂ければ…
私の方にも、義兄さんへの良い縁談話があるんですよ。」
「悪かったね、君にも前もって相談するべきでした。
だが、もう、私の意思は変わりません。」
「………。」
強い口調で押し切られ、言葉を返せずに黙った。
「とにかく、もう、決まった事です。
私の第二の人生を、どうか祝って下さい。」
「………。」
岡田には思惑があった。
青田の後継者に自分がなる事だ。
青田の娘は、使い物にならない。
では、誰が後を継ぐ?
そう、自分しかいないではないか。
現に、会社では役員として青田の片腕となってる。
そして、自分には大学生の優秀な息子もいる。
卒業したら、うちの会社に就職し、よくよくは自分の後継ぎとなる。
それが、だ。
青田が再婚すると、息子が出来てしまうではないか。
シナリオが崩れる。
岡田は煙草を灰皿に押し当て、乱暴に揉み消した。