飛べない黒猫
「驚きました。
こんなに嬉しいことはありません。
真央が…
心を閉ざして、いつも悲しい目をして怯えていた真央が…
ありがとう、蓮くん!
………ありがとう。」


声が震えている。


「いえ、違います。
僕では、ないのです。」


青田が顔をあげて、蓮をみる。


「真央ちゃんは苦しい発作の時、クロオを抱き、僕があげたペンダントを握りしめます。
きっと暗示みたいなものなんでしょうが、そうすることで守られると思ってるみたいなんです。」


蓮はホームセンターの駐車場での出来事を話した。


「真央ちゃん本人が、乗り越えようと頑張ったんです。
そして、やり遂げたんです。
僕は、一緒に喜んで、褒めて褒めて…ご褒美あげただけなんです。
勇気をもった自分自身を褒めて、自信をつけて欲しかったのです。」


「そんな事があったんですか…」


青田はじっと考え込んでいた。


「僕も…彼女の気持ち、少しは…わかります。
きっと、同じ思いをしています。」


蓮は自分の右手の奇形を見る。


「彼女は、悲しみも憎しみも苦しみも…
痛みさえも自分の中に押し込めています。
このままでは、壊れてしまいます。」


「わかっている。
わかっているが、手立てが見つからないのです。
カウンセリングに通っても、真央は先生にも心を開かない…」


うなだれる青田に蓮は強く言った。


「僕たちで、発散させましょう。
痛ければ痛いと叫けばいいんです。
辛いなら大声で泣けばいい。
楽しかったら、騒いで羽目を外して思いっきりはしゃげばいいんです。」





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