飛べない黒猫
「取り敢えず、中に入りましょう。
この格好じゃあ、風邪をひいてしまうわ。」


洋子は寒そうに、両腕をさすっている。
2人は上着も無しで飛び出して来たのだった。



車をガレージに入れ、居間に着くと、真央が昼間に食べた容器や包み紙のゴミを得意げに見せていた。


「これは、ポテトだろう?
これは…なんだ?
あっ、楊枝で食べたの?
わかった!たこ焼きだろう?」


真央は嬉しそうにうなずく。


「随分食べたねぇ…
夕飯ちゃんと食べられるのかい?」


たしなめる口調で話しているものの、蓮は、こんなに嬉しそうな顔の青田を見た事がなかった。


「いろんな所に真央を連れて行ってくれたみたいで…
蓮くん、すまなかったね。」


プチ冒険の概要をひととおり伝えて満足した真央は、テーブルに広げられた勝利品の残骸を、やっと捨てる気になったらしい。

レジ袋に入れ戻してキッチンへ持って行った。


「最初に、ホームセンターへコピー用紙を買いに行って…。
それから、真央ちゃんの食べたい物を食べ歩きしようって事になって。
たこ焼き、クレープ、ハンバーガーを買って、車内で食べました。
市内の外れまで足をのばして…公園とか、神社とか、のどかな市内観光って感じでまわりました。」


ゴミを捨てて戻ってきた真央は、マツボックリとナナカマドの実をポケットから出してソファーに座っている青田と洋子に見せた。


「うふふっ、かわいい。」


「僕も、こんなふうに、のんびり外の景色を楽しむ事なんてなかったから。
いい気分転換になりました。」


真央は2人から木の実を受け取り、手のひらにそっと乗せて自分の部屋に戻って行った。


「配慮が足りませんでした。
出かけるからと、ひと言、連絡入れるべきでした、すみません。
買い物だけで帰るつもりだったので、携帯も置いてきてしまってて…」


突然、姿勢を正して青田は蓮に頭を下げた。
両膝にあてた手が震えている。
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