飛べない黒猫
真央はサンルームでステンドグラスの制作中だった。

デザイン画から型紙を作り、それをガラスにのり付けしてカットする。


真央の作品が繊細に見えるのは、このガラスカットが正確だから。
そうすることによりハンダの線が細く、美しい仕上がりになる。


小さなガラスの破片を、丁寧にガラスカッターで線を入れて、切り取っていく。

ガラスなので、紙を切るようにはいかない、カッターのローラーの刃先で傷をつけて、手で割るのだ。
ただ、曲線や小さいものは、手で割れないので、バリ取りという道具を使って割っていく。


こんな気の遠くなるような細かな作業を、真央は淡々とこなしていくのだ。



「クロオ、庭を歩いてたよ。」


開いたままになっていたドアから顔を出して、蓮は話しかける。
真央は手を止めて、顔を上げた。


「良い天気だね。
…なんか、すごく細かい事してるね。」


蓮は作業台に近づいて、切り取ったガラスの破片を手に取った。




テラコッタの素焼きタイルが引き詰められたこのサンルームには、ティータイム用のテーブルと椅子が置かれていた。

日当たりが良く、庭を見渡せるこの場所はく特等席だった。


しかし、真央がステンドグラスを作り始めてからは、華奢なデザインのテーブルは片付けられて作業台が置かれ、その横には工具や材料が入ったキャスターワゴンが並ぶ。

最高に贅沢なアトリエに変わった。



「ねぇ、真央ちゃんのステンドグラスだけどさ、美術展とかに出してみたらどうかなと思って。」


真央は首をかしげる。


「真央ちゃんのって、すごく個性的なデザインで独特だよね。
信じられないほど細かい作業で、すごく丁寧で…。
他の人にも見せてみたらどうかな。」


真央は笑って両手を横に振るが、蓮は続ける。


「きっとね、張り合いってゆーか、気合いが入って、楽しいと思うよ。
出来上がった作品送るだけだから、難しい事ないし…
俺さ、ちょっと調べてみるから、やってみようよ。」


戸惑う真央をその場に残し、蓮は意気揚々自分の部屋に引き返した。
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