飛べない黒猫
蓮と真央は、一緒にトーストとベーコンエッグの簡単な食事を取った。
その後、蓮は、部屋に戻って仕事を始め、真央はサンルームで作業の続きをした。



アルミサッシの窓枠をカチャカチャと引っ掻く音がした。
クロオが、窓を開けようと必死に手をかけ引っ張ってる。

真央は、作業を中断して窓をあけた。



抱き上げたクロオからは、外の冷たいひんやりとした冷気と埃っぽい匂いがした。

足を洗って、身体を拭いてやり床に降ろす。
クロオは暖炉へと一直線にむかい、マットに腰をおろし毛繕いを始めた。



暖かい暖炉の前。
陽当たりの良い窓辺。
ふかふかなベッド。
清潔なお水と、栄養のあるカリカリフード。

家にいたら、居心地良く欲しいモノは全て揃っているのに、快適に過ごせるのに、クロオは外に出かけて行く。


時には、傷をつけて帰ってきた。
怖い思いして、痛い思いして。


それでも、また出かけて行く。

寒い日も、雨の日も、暑い日も…。




手のひらに乗るくらい小さくて、まだ1人で生きていけないくらい、か弱くて。
あんなに震えて、怯えていたのに。


捨てられて、怖い思いしたのに…
クロオは外を恐れない。


そんなクロオが羨ましかった。

同時に、寂しく思う。
自分1人置いて行かれているようで、裏切られているような気にもなった。



でも、今は少し違う。

真央は、外の世界に少しだけ関心を持つ。



作業台に戻ってガラスの破片を手に取る。

薄く色づく無表情のガラスが、周りのガラスの色や形に影響されながら、美しい表情を作り上げていく。

それは、ガラスも、人も同じ。
関わり合い影響しあって、自分の色が生かされるのだ。
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