Rose of blood *short story*
エリーを探しに行こうと何度も思った。


でも、あの時のエリーの顔を思い出すとできなかった。


俺は蹲りずっと同じ場所に座っている。


血を飲んでいないからか、体に力が入らない。


エリーは新しい人生を…と言ったけど、このままここで死ぬのも悪くないと思った。



『おい、大丈夫か?』



顔を上げると、がたいのいい大柄な男が立っていた。



『そのままだと死んじまうぞ』

『…そうだな』

『そうだなって、おめぇよぉ…。名前何てんだ?俺はジオラだ』

『名前は……ない』



ジオラという男は片手で頭を押さえ、あからさまに困ったというような顔をする。


名前はない…これでいいんだろ?


エリー………。





< 121 / 135 >

この作品をシェア

pagetop