欲望チェリ-止まらない心
しかし
矢嶌紅は何も言わない。
「??」
あれ……?
あたしが顔をあげると、彼はあたしなんて無視して静かに資料を制作していた。
「………」
ゴクリ…
怒鳴られるよりもずっと怖いよ。
あたしはとにかく、恐る恐る彼に近付いた。
「あの…本当に…すみません」
臆病なあたしは謝るしか出来ない…
「ごめんなさ…ぃ…」
だけどその声すらだんだん小さくなる。
やっぱり…もう手遅れなんだろうか?
その時
たたずむあたしに矢嶌紅はようやく手を止めた。
「何か用?」
「え……?」
「謝るだけなら邪魔だから帰れば?」
「!」
それだけ言うと、矢嶌紅はまた手を動かし出した。
「…………」
あまりにも冷たい言い方にじわりと涙が溢れた。
「ッ……」
駄目…!泣いちゃダメだ。
がんばるって決めたじゃんか。