I LOVE YOUが聴きたくて
日は変わり。

怜樹は、自分が破りばらまいた、自分が描いた絵や壊したものなど、未だ、片付けられずにいた。

怜樹は、テラス際に座って、壁にもたれかかっていた。
そして、外を眺める。

冬の曇空。

太陽は、顔を出しては、すぐに雲に隠れる。
潮風の匂いがしている。

海は、穏やかだった。

遠くから、御囃子が聴こえてきた。

笛や太鼓の和音楽がしている。

【ここへきたばかりの時も、聴こえてきたな……】

怜樹は、ぼんやりと耳を傾けて聴いていた。



自分のアトリエの玄関の方で、車が停まった音がした。

すると、

ピンポン ~

玄関のベルが鳴った。

怜樹は、動かなかった。

ベルの音に、動くことはせず、怜樹は、テラス際の壁にもたれかかって、御囃子を聴いていた。


訪問者は、玄関のドアが開いてることに気付いて、そっと開ける。

「怜~、いる~?…いないの~?」

訪れたのは、怜(ユウ)を連れた、魅麗であった。

怜樹は、その声に、驚いた。

が、
立ち上がる精神は無く、怜樹は、座って、壁にもたれかかったままでいた。

「入るよ~」

魅麗は、怜(ユウ)の手をひいて、中へと入る。

怜樹は、だんだんと近寄ってくる魅麗の気配を感じながら、取り繕う気持ちも、失せてしまっていた。
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