I LOVE YOUが聴きたくて
魅麗は、覚悟した。

普通事ではない、我が子の事だ。自分と怜樹の子どもの事だ。

【怜樹からの宝物だもの。大事に伝えよう】

魅麗は、覚悟を決めた。

「…何?」

「魅麗、…子どもがいるの?」

魅麗は、怜樹を見つめた。
真面目な顔をしていた。
【こんな魅麗の顔は、見たことない】

怜樹は、何を聞いても取り乱さない、と、腹を据えた。
心を落ち着かせる。

魅麗は、強い眼差しだった。

「うん」

「そっか。…この前、見掛けたんだ。凄い雨だったから、立ち寄らずに、急いで帰ったんだ」

魅麗は、洗濯物を慌てて取り込んだ、雨の日を思い出す。

【見ていたんだ…】

魅麗は、怜樹から目を落としたが、すぐに、怜樹を見つめた。

「そうだったの」

「うん」

怜樹も、魅麗から目を離ずにいた。

「何歳なの?」

「三歳。もうすぐ、四歳になるわ」

「そっか。…、魅麗、結婚してないって言ってたね」

「うん」

「彼氏もいない、って…」

「えぇ」

「一人で育ててきたの?」

「そうよ」

魅麗は、満面の笑顔で微笑んだ。

怜樹は、なんとなく、その笑顔が辛かった。

【パリで別れて、会っていない間に、魅麗は、子どもを産んで、一人で育てて。予想しなかったな。そういう人生を送っていたなんて。一人で育てることは、決して、楽なことではないはずで……】

魅麗は、決して、無理して笑っているようには見えなかった。

ただ、勝手に、怜樹は、辛く悲しい気持ちになった。

【僕に、何ができる?】

怜樹は、考えていた。
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