Mind of ice
それは攻撃系の黒魔法、回復系の白魔法共に詠唱が必要不可欠だからだ。先ほどの攻撃「アイスミスド」は氷系の中でも比較的詠唱が短い。短いのは弱い魔法だが、短かろうが唱えなきゃ発動はしない。それを一切感じさせないで発動させたのであるから、彼女はかなりの玄人ということになる。しかし、魔法系の玄人は年齢に比例する。年を重ねる毎に巧くなるのである。みた感じ、十代半ばから十代後半だろうと思わしき彼女が唱えられるとはとても思えなかった。
体制を戻した彼は再度この不思議な少女を確認してみた。魔法使い独特の杖系武器は持たず、鋭いレイピアを帯剣していたので剣士だと思うのだが、魔法攻撃した時点で魔剣士となる…のだが、魔剣士は剣士が多少の魔法を使える程度である。当たり前、得意なわけではないので詠唱は必須になる。
しかし先ほどは気付かなかったが、装備をよく確かめると少女が魔法使いである事がわかり始めた。特に首から下げているペンダントはかなりの魔力を帯びたアイテムである事がわかった。それ一つでかなりの魔力を増幅できそうである。
先ほどは興味半分な気分で声をかけようとした彼は瞬時に少女が欲しくなった。何故なら彼のパーティーに魔法攻撃ができる人物がいないからである。

「原因を追求するには魔法使いは必須である」

という噂が広まり、彼もいずれは魔法使いをパーティーに加えようと思っていた。そこに、かなりの魔力を持つ少女が現れたのだから、そう思うのも当たり前である。
今度は後ろからではなく、斜め後ろから手は出さずに声をかけてみる事にした。

「隣の席、いいかな?」

また攻撃がくるか気を張ったが、少女が顔を向けじっとこちらを眺めたらまた向きを戻してしまった。攻撃が無かった事を了承と判断した彼は少女の隣に腰掛けることにした。
さて座ったがよいが、いかにして話しかけるべきか…。先ほどの様にするとまた攻撃を喰らうのは確実で、かといってこのままでいたら先に進まない。意をけして言葉だけでそれとなくアタックしてみることにした。

「私はグランドールを拠点にしているしがない傭兵でデイルという。君は?」

何を話しかければよいか判らず取りあえず無難に自己紹介がてらに切り出してみた。しかし、話しかけられた少女は無反応に対して、彼の声が必然的に聞こえた周りの傭兵がの方がざわめきだしていた。
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