Mind of ice
五本の真空波がリーナを襲ったが、左手の前に作られた障壁で全てを防がれた。
人間が作る障壁なんかは問題ないはずだった。絶対障壁は難しいが、今回はそんなものを唱える時間など与えはしなかった。
しかし、実際は普通の障壁で防がれてしまった。

「そ、そんなはずは…」

何が起こっているのか解らないでいたセイレーンはこの時初めてリーナの顔をじっくり見たのである。
整った綺麗な顔に金色の長い髪、そして左だけ金色に輝く瞳。セイレーンは昔、この顔を見たような気がした。そして、ある人物を思い出したのである。

「貴様!いや、あなた様はまさか…」

「お喋りすぎですよ。」

セイレーンの言葉を遮るように話すリーナ。そして、それと同時に右手をセイレーンに向けた。

「さようなら。」

そう告げた後、リーナは聞いた事のない魔法を唱えた。

「ホワイトブリザード!」

構えた右手から無数の雹が現れ、それが一斉にセイレーンを襲った。そして、雹が当たった場所は一瞬で氷とかした。
数秒後、セイレーンの氷像が出来上がっていた。

「バカな子…」

リーナが発した声は誰にも聞かれず、セイレーンだった氷像を自分が持つレイピアで粉砕した。

終わってみれば、リーナの圧勝で戦いを終えた。
自分の限界を振り絞って攻撃しても、かすり傷程度しかダメージを与える事しか出来なかった敵をである。そんな人間はいるはず無い。ましてや、覚醒したら容姿が変わるなど聞いたこともない。

「君は一体何者なんだ?」

デイルはそれしか言葉が浮かばなかった。

「この先にお城があります。そこに着いたら全てを話します。それにここは私の森ですから、私達以外何もいませんので安心して下さい。」

言われてみれば、周りは森が破壊されているが、それにしては静かすぎだった。

「…解った。城に着いたら話してくれよ。」

どうせ逃げることなんか出来ないのだから、ここは素直についてゆくしかなかった。それにどうやら敵意は無いように思えた。しかし、何よりもデイルはリーナを少しながらも意識していたからかもしれない。この時のデイル自信は気付いていなかったが…。
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