【BL】風鈴が鳴る頃に[短編]
「別にむきになんかなっ……あ、」
話の途中だというのに君は、俺の抱えていたサッカーボールをさっと横取りした。
そしてそのボールを、上に投げキャッチする。また投げてキャッチを繰り返す。
……完璧話のペースが自由すぎる。
「……ああ、そうだ。俺、"本当の"友達待たせてるんだったー。だから悪いけどもう戻る。ちょっ、ボール返せよ!!」
ボールに向かって手を伸ばすがその手をひょいとかわされ、思わずカチンとくる。
「なっ、ちょ返せよッ」
「やだ」
「……はぁ!?なにソレ我儘すぎっ」
「そんなことないけど」
「矛盾してるッ」
言い合いしながらのボールの争奪戦。君はなかなか返してくれない。息が乱れる。
「はぁっ、……速く返「俺知ってるんだ」
言葉を遮られた。いきなりなんだよ全く。知ってる、何を。思い当たる節が全くない。
「なっ、何をだよ」
「ずっと見てたろ、俺のこと」
確信を付く一言。
「あんたは別に、気が付いてないとか思ってたんだろうけど。
……普通、あんな熱い視線送られた誰だって気が付く」
「あ、熱い視線とか……勝手に解釈してくれんなバカッッ」
喉がカサついて上手く言葉が出てこない。
いや、でも嘘だろ……、距離もあったし人だって溢れかえっていた。気づかれるはずがない、そう思ってたのに。
「ねぇ、なんで俺のこと見てたの?」
いつの間にやら彼は俺の顔を覗き込んでいる。その目は面白いモノを見つけたように楽しげで。
……調子に乗るなよ。ただその髪の色が珍しかったから、遠くから見た君が、周りの景色を超越してたからなんて……死んでも言わないッッ。
「わっ、分かった。俺の負けでいい。あーもう!!後もう少しここにいてやるよ」
君からボールをもぎ取る。手に戻ってきたボールの感触が安心感をくれる。
思わずソレを上に投げたい衝動に駆られたが……誰かさんがさっきやっていた気がするので今はやらないでおいた。