【BL】風鈴が鳴る頃に[短編]
祭りに出掛けようとした頃に
「そろそろ行こうぜっ!!花火大会も見てェけど、普通にもやりたくない?」


律が楽しそーに話しかけてくる。


「ロッケット花火を人に向けるのはやめて下さい」


「な、なにそれっ!!?俺に言ってんの、依乎!!そんな事したことねェじゃんっ!!?」


「……先に言っとかないとやりそうだから」


「やりません!!てか、花火人に向けるとかダメ、絶対!!!」


律がまたバタバタしている。その横で諒が、欠伸をしながら眠そうな声で話してくる。


「でもさぁ〜、やっぱ男だけで花火とかなーんか……。まぁ、俺らってどこからどー見ても見ても色男だけどォ〜」


「まぁいいじゃんっ!!夜ってだけでテンション上がるし」


律の腕が、隣にいる俺と諒の肩に回ってくる。


「夜ってだけでとかガキかよ、りっちゃんはっ」


「なっ……うっせーなっ諒!!」


律と諒が俺の前を走っていく。
やっぱりコンビを組んだ方がいいよ、お前ら。
俺は1人で頷くと隣の田中に目をやる。


ピローン、そんな音が田中の携帯からした。


「なっ何してんの?!」


「月綺麗だから写メってみた」


「……(苦笑)」


諒、俺なんかじゃなくて田中みたいな奴を天然つーんじゃねぇの??いや、マイペース、か。


でも確かに、分かる気がする。今日のは本当、綺麗な満月だから。


祭り独特の雰囲気が近づいてくる。がやがやした音も大きくなる。


遠くても分かる人の多さ。浴衣を纏った小さな女の子が、手にヨーヨーをぶら下げて歩いてくる。




ーーざわざわ ざわざわ




神社の木が大きく揺れた。

俺はなんだか落ち着かなくて、前にいる律と諒を追いかけた。
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