慟哭の彼方


アルスが言いかけた時だった。

「こんにちは!」

元気な声と共に、小さな女の子が転がり込んでくる。


それは数か月前に店にやってきた少女だった。

確か名前は…。

「リイア」

チェルシーの声が少女を呼ぶ。

リイアは照れくさそうに笑って、後ろに立つ2人の大人を指差した。

彼女の両親だろうか。
つり上がった目がよく似ていた。


「あのね、魔女さん。あたし、お父さんの仕事で引っ越すことになったの」

そっと横顔を窺うと、チェルシーの瞳が寂しそうに揺れた。


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