慟哭の彼方


リイアの両親が、チェルシーに向かって深く頭を下げる。

「リイアがお世話になったと聞きました。あの、それでお代の方は…」

「いいえ、お代は一切頂いていません。…彼女の目があまりに真剣だったもので、そんなもの忘れてしまいました」


嘘だ。
彼女は今までの依頼人に金額を請求したことなんてない。

請求するのは、お遊び感覚で願い事をしに来る人たちにだけ。

その人たちも彼女が提示した金額を見ればすぐに逃げ去る。


心からの願いを叶えようとする人を、彼女は値段で縛らない。

誰かの願いが叶うことが彼女にとっての「お代」なのだから。


だけどそれで傷付くのなら、本末転倒じゃないのか。


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